見知らぬ街
高いところから街を見下ろすのが好きだ。
いつもの見慣れた街が、まるで見知らぬ街のように見える。
なんだか旅行してるときのような気分になって、わくわくしてくる。
たとえば、デリーのメインバザールのホテルの屋上から見渡す雑踏とか、ラオス、ルアンパバンのプーシーの丘の上から見下ろす町の様子とか、カトマンズのスワヤンブナートから見る霧に包まれた赤煉瓦の街並みとか……。
世の中には無数の人がいて、無数の出来事が日々起こっているんだろうなぁなんて当たり前のことを考えたりして。
こうして見ると、彦根も違った街のように見える。
ぼくは、無数の人の中のひとりで、ぼくの毎日もまた無数の出来事のうちのひとつにすぎないのだと思うと、ちょっと気が楽になる。
旅に出なくなって、もう丸5年が経とうとしている。
旅行をしていたときは、どんなふうにも生きていけるって思っていた。
5年経ったいまはどうだろうか?
「HOTEL」という文字にそんなことを思った。
さて、明日からまた無数の出来事のうちのひとつが待っているわけなんだけど。