ズミクロン!

むしゃくしゃして買った。
ライカならなんでもよかった。
いまは後悔している。

って書きたかっただけだけです。まさか、後悔なんてしておりませんとも。

ちょっと前から物欲が止まらなくて、彼女と別れた記念(決して別れたのを喜んでいるわけではない)になにか買おうと思って、誕生日にもなにか買おうと思って、思ってはいるもののなかなか手を出せずに時間が経ってしまったわけだけど、先日オークションの入札に熱が入ってしまって、気がついたらころっと落札してしまったのが上の写真のレンズ。

自分でも、なんで今さら……という感は否めないのだけど、やってきたのはズミクロン50mmの第3世代。
いわば、なんの変哲もない近代レンズなわけで、他にも選択肢はたくさんありそうなものだ。でも、これには深い理由がある(っていうほど深くもないか)。

Ads by Google

実は、ズミクロン50mmを手に入れたのはこれで4度目だ。
自分でも書いていて馬鹿らしくなってくるけど、今まで3度も同じ(厳密には違うけど)レンズを買っては売ってきたわけだ。

はじめて買ったのは、初代ズミクロンの固定鏡胴前期タイプ。HEXAR RFと一緒に買った。予算がきわめて少なかったので外観はボロボロでヘリコイドはガタがきているような代物だった。フィートのシングルスケールだったので、今思えば固定鏡胴の前期だろうと思うが、そのときには知識がなかったのでわからなかった。
外装こそボロボロのレンズだったけど、それでもとろけるようなボケと美しいトーンに魅了され、このレンズを持って旅に出た。PHOTO GALLERYに掲載している(する予定の)写真はほとんどこのレンズで撮ったものだ。カラーではほとんど撮っていないのでわからないけど、モノクロで撮る限りは最高のレンズだったんじゃないかと思う。できたネガも非常に焼きやすかった。50mmレンズが1本あればそれで十分じゃないかと思えるくらい気に入っていた(当然ながら実際には他の焦点距離のレンズも持って行っていた)。
でも、結局このレンズはインドで盗まれてしまった。

旅行から帰ってきて、海外旅行保険がおりて、そのお金で買ったのが今のレンズと同じ第3世代のズミクロンだった。
もっとも一般的でもっとも無難なズミクロン。操作性もよく、デザインも好きだった。
でも、日本に帰ってからは旅行のネガを焼くので精一杯であまり写真を撮らなかった。だから第3世代ズミクロンではあまりこれという写真を撮った記憶がない。
このレンズはあまりつかわないまま、M4-2の本体と一緒に友人の元に巣立っていった。
その友人というのがboomboombooksさんなわけだけど、その後カメラはいかがお過ごしですか?

さて、3本目のズミクロンは、またしても初代だった。今度はダブルスケールの後期。程度も非常によく操作感も前のとは雲泥の差だった。
旅行していたときのあの感覚でもう一度写真を撮りたい、そう思って少し無理をして買った。状態も良く、操作感はさすがライカという感じのきれいなレンズだった。
その頃のメインレンズは今でも使っているズマロンの2.8。今でこそ35mmのほうがしっくり来るようになってしまったけど、あのときは35mmの広い画面に馴染めなかったというのもあって、やはり、原点は50mmだと思って買った。
そうやって手に入れた2度目の初代ズミクロンだったけど、それから興味は中判にいってしまってハッセルだのローライだの言い出して、このレンズもM2と一緒に後輩に譲ってしまった。
その後輩はいま隣の席で一緒に仕事をしているので、M2とズミクロンも未だに身近にある。その姿を見る度に惜しいなぁと思ったりするわけだけど、まあ、仕方がない。

とにかく、思い返せば毎度のことながらもっともらしい理由をつけてよくも次から次へと買ったものだと感心さえしてしまう。
ずいぶん長い前置きになってしまったけど、4度目のズミクロン。3度目の正直を通り越して4度目である。
ぼくは基本的に世代でいうと第2世代が好きだ。代表例は角付きの35mmズミクロン。それからレトロフォーカスになったエルマリート28mm(初代は高すぎて現実的でない)。
いろんなライカ本やサイト見ているうちに、どちらかというとマイナーで人気のない第2世代にいつしか惹かれるようになった。
真鍮製だった鏡胴は軽合金になり、質感的には初代には大きく劣るものの、実用的でコンパクト。レンズ設計も職人技からコンピュータ設計に変わりはじめたころでライカの味を残しながらも近代的。なにより不人気のため値段が安いのがいい。
そんなわけで、50mmも第2世代のズミクロンがいいと言いたいところだけど、残念なことに第2世代ズミクロンにはぼくにとって決定的なマイナス点があった
第2世代のズミクロン50mmには、どうしたことかピントレバーがないのだ。ローレットが刻まれたアルミのピントリングがあるだけ。この点が唯一どうにも納得がいかない。
もちろんぼくも一眼レフから写真をはじめたから、レバーでピントを操作するというライカの作法には最初はかなり違和感があった。しかし、レンジファインダーに慣れていくうちにピントレバーこそライカの一番の美点だと思うようになった。
今ではピントレバーに関しては、ぼくはフード以上にこだわりがある。

そんな理由から、ズミクロン50mmを選ぶということになると第2世代と現行モデルはいつも最初から選択肢からはずれてしまう(DRズミクロンも)。第2世代を改造してピントレバーを付けることも考えたけど、それはあまりにも現実的でないし。

巡り巡った末に、50mmは第3世代しかないという結論にたどり着いた。
多少現代的な高コントラストでシャープな写りをするところは目をつぶろうと思う。というか、そもそもそんな描写の区別さえたぶんつかないだろうから。
画質面は、これからぼちぼち撮り溜めて、それから結論を出しても遅くはない。
少なくとも操作性と実用性という点においては、ぼくにとっての究極の50mmなのではないかと思う。

ところで、今回手に入れたズミクロンは、第3世代のほんとに初期のもので、ピントレバーが一般的な二股ではなく扇型になっている。このタイプは1979年から2年くらいしか製造されなかったそうだ。
レンズ前面の刻印も細い書体で「SUMMICRON-M LEITZ LENS MADE IN CANADA」と刻印してある。以前に持っていた第3世代は比較的新しい時代のウェッツラー製だった。
さすがにライツ社の低迷期の頃の製品だけあって、刻印の白い文字も明らかに雑だ。ただ、触ってみた感触は明らかに今のレンズのほうがいい。一般にカナダレンズは品質が悪いと言われるけど、このレンズはヘリコイドの感触も絞りのクリック感も以前持っていたのよりも格段にいい。個体差もあるのではっきりとしたことは言えないが、第3世代の最初期は品質が安定していたのかもしれない。うれしい誤算である。
写りのほうはのちほど「初代 vs 第3世代」という感じで撮り比べてみたいと思う。

そんなわけで、だらだらと好き放題書いてしまったわりに、肝心のなぜ今50mmレンズなのかについて全然書いていないけど、要するにその点については弁明の予知もないということ。冒頭にも書いた通りついオークションに熱が入ってしまい衝動買いをしてしまったわけだ。でも、今の心境としては大変満足だったりする。

ちなみに昨日の夜この文章を書きながら、時おりレンズの操作感を楽しんでニヤニヤしていたことはいうまでもない。

追記 2006.12.06

3度目に買ったズミクロン初代は、いま確認してみたところ後期ではなく前期でした。距離目盛りもシングルスケールだったし。ピントリングのローレットも初期のパターンだった。
思い込みというのは恐ろしいものですね。ま、前期と後期で具体的に写りに違いがあるのかといわれるとよくわからないんですけど。

Ads by Google

comments powered by Disqus