自転車泥棒
実は人生には、僕らが思っているよりももっとたくさんターニングポイントがあるんじゃないかという気が最近している。たったひとつの選択がのちの明暗を分けるみたいな……。ひとつたりとも間違ってはいけない。まるで、風雲たけし城の龍神池とかそんな感じ(みんな覚えてますか?)。
そういうボタンのかけ違いみたいなことは、あとになって気がつくもので、うまくいっているときにはそれがたまたまうまくいっていることに気がつかない。
おそらくぼくらは、毎日、いや、一瞬一瞬でそういう選択肢を選んでいきながら、判断を下しながら生きているのだろう。そして、その上にいまの自分があるわけで……。
たとえばいつもはちゃんと鍵をかけるのに、今日に限って前輪だけに鍵をかけた。マウンテンバイクの前輪は簡単に外れることはよくわかっているのに、まさかそんなことがあるはずはないだろうと思って。
盗んだやつが悪い。確かにそう。
でも、盗まれる側にも隙はあった。
そしてなによりタイミングが悪かった。
教訓じみた話は好きじゃない。
「だから、隙のない生活を送りましょう」なんて、そんなことはどうだっていい。
それよりも、たったひとつ踏み違えただけで、恐ろしいほどのタイミングで、思いもつかない結末が待っているという事実が悲しい。
でも、それも人生。盗まれて悲しい思いをするのもまた一興……。
そんなふうに現実を全部を楽しめたらさぞ立派な人間になれるんだろうなぁ、たぶん。